鴻巣市 落合日本庭園のビジネス化について、今後の方向性への提言である。  中村憲雄 18-10-23

 

18-10-16に落合日本庭園を保存する会(うさぎ山庭園保存会)が催された。発起人代表者である一ノ瀬勲夫氏以下、BMC研究会の小西洋三氏、中村の他、4名の出席であった。

議題は前回に引き続き、今後の活動方向について、色々な意見が活発に出された。その結果を踏まえ、以下は私中村の個人的提言である。

 

1.ビジネス化構想の方向性について

① 「新事業として経済的に成立すること」が本会の目的を支える必要条件である。これが合意された。したがってBMC研究会メンバーである私も、参加する意義がある。ボランティアでは参加しにくい。

ビジネスとして成功すること。これが最大の要件である。しかし条件としてオーナーである落合祐子氏が気持ちよく居住できること。当庭園内が第一要件であるが、隣接地なども検討対象になるか?

③現状の庭園や茶室の整備だけではビジネス成功には不足と予測される。新たな付加価値創造が必要である。

④ 現状の母屋の改造や、その周辺に所有している土地スペースの有効な活用が必要。更に当庭園に隣接する、落合氏所有の貸駐車場の有効活用も大きな武器になる。

⑤ 以上を、新しい事業を創造する取り組みとして「事業計画書」としてまとめることが必要である。これができると、当会メンバーの相互合意や、対外的事業関連者への説得が可能になる。

⑥しかし当園単独では、事業化成功は制限がある。鴻巣市など公的機関や金融機関などの賛同が得られるレベルにしたい。その為には、もう1ランク次元が高い「鴻巣市の観光事業」成功のシナリオを構築し、関係機関に提案し、ある程度の賛同を得られることが絶対的に必要と考える。その2つが成立する「事業計画書」の取り組みが求められている。

 

2.落合日本庭園(うさぎ山庭園ふる里)のビジネス化案

①  前回も提案したが、当庭園の「新たな付加価値のある特徴」を持たせること。これなしにはビジネス成功には制限がある。これには2つの解決策がある。

a. 1つは、前回の会議にも出された、現状の母屋やその周辺のスペースの有効活用案。これが基本。

b. もう1つは、「コウノトリ」の当園への飛来を何とか実現させる。これがビジネス成功の目玉になると思われる。これなしでは付加価値的に、一般的競争相手と大きな差をつけることは難しい

c. 「コウノトリ」は現在鴻巣市に1羽だけ飛来している。鴻巣市は、この餌場を荒川河川敷に計画しているとか。この餌場が将来コウノトリの通常の食事場所であり永住地になれば良い。しかし当園にもオヤツ程度でもエサがあれば、飛来することは期待できる。この可能性を真剣に考える。現在はアオサギ・シラサギが歓迎されないが飛来してくるとか。

d. 技術士の室捷介氏は水関係の専門家であるが、環境や水産資源など、この類の知識や経験が豊富である。実家は和歌山市にあり広大な敷地がある。ここで現在コウノトリのエサになるドジョウの養殖について、その可能性を自ら実験し確認中である。室氏は実践的・理論的活動家である。

e. その他、当庭園関係者に土台がある、例えば健康関係の事業資源なども活用し、「事業計画書」の叩き台を先ず作りたい。

 

「鴻巣市の観光事業化」成功のシナリオ構築も、前回概要を提案したが、これも併せて実施したい。これは別途検討したい。

 

3.事業計画書について

① 事業は儲けて利益を出すことが必要である。様々な構想は全てこの1点の実現に集約される。

② 当然当園だけではなく鴻巣市などの公的観光事業との関連も大きい。しかし自助努力も必要である。

③ 前回の検討結果では、庭園への入場料や茶室の使用料だけでは、必要な収入が期待されにくい。

④ 当園事業の大きな収入源はレストラン事業が第1と考えられる。他をメインにするには力不足である。

⑤ 庭園眺望がウリだけでは力不足である。やはりコウノトリが(時々でも)飛来する庭園をウリにしたい。従って大きな要素は、ドジョウがいる泥のある浅い池である。ここに養殖したドジョウを定期的に放流する。オヤツのドジョウである。更に、羽を休める営巣塔なども建てたい。

 

⑥ ターゲット顧客を絞りたい。

a. とりあえずは中高年の女性である。この顧客が定期的にリピート来園すること。若い女性や男は後からついてくる。中高年女性を先ず引き付ける魅力のある企画であること。顧客予備軍が参画し、魅力ある企画案を複数で創造することも大変有効である。多様な組み合わせになっても面白い。

b. 顧客のアンケートからは、真のニーズは出てこない。過去の分かり切った一般論のニーズでしかない。顧客が気づいていない、潜在的ニーズを何とかして探り出すことが、成功の秘訣である。

c. 将来の主たる顧客は、欧米系の金持ちの海外顧客に焦点を移す。彼らは土産物や買い物よりも、日本の歴史、伝統、文化に興味を持っている。これに応える体制や準備が必要である。当然当園だけでなく、観光地域全体的に言えることではある。この観点が我が国の観光戦略に欠けている。

 

⑦ 売り上げ計画・利益計画を叩き台案から作成する。叩き台案の片鱗が残らないほど熱く議論をする。下記はごく一般論的に考えただけの資料である。

a. 当園の従業員数を、レストランも経営すると仮定して、とりあえず6人とする。

b. 従業員の年収(固定費):500万円×6=3,000万円

c. 設備償却費(固定費):5,000万円÷10年=500万円/年間

d. レストラン管理運営費:500万円/年間

e. 庭園管理費(外注):100万円/年

f. 借入金返済(年間):5,000万円÷10年=500万円/年間

g. その他必要経費:400万円

h. 支出合計:5,000万円/年間

i. 希望営業利益:1,000万円/年間

 j. 希望売り上げ高:6,000万円/年間   →  500万円/月間   →  25万円/日

k. レストランで一人当たり1,250円/日売り上げとすると、200人/日の訪問が必要となる。

l. その他入園料、貸室、貸駐車場の収入は、プラスアルファと考える。

 

⑧ レストランで、一人当たり1,250円/日売り上げ、200人/日の訪問を成立させるには

a. コウノトリが時々でも飛来する、美しい日本庭園風ビオトープ庭園の眺望。

b. 地元食材を多用したおいしい、特徴のある目玉メニュー。例えば高級ドジョウ料理など。

(ドジョウは、非常に栄養価が高い。コウノトリ用の養殖ドジョウの活用を名物に。)

c. ハーブティ、ハーブ料理、健康薬用食品の開発と提供。(漢方薬局、医者、薬剤師の健康資源)

d. 最高級ではなくても、中級以上の雰囲気のあるレストラン。

e. 40席以上?日本風レストラン?琴の音のBGM?日本風のウリ。しかし椅子席多用か。

f. 庭園訪問客茶室利用客の、レストラン利用を狙う。

g. 駅から8分ぐらいの徒歩圏で、駅よりバス1停留所強にありアクセスは良い。広い駐車場もある。

 

⑨ 業計画書が100点満点でなくとも、ある程度できれば共通言語になり、アクションプランにもなる。計画書が50点以下でのアクションは無駄である。しかし石橋を叩くだけではなく、ある程度のチャレンジは必要である。先ず事業の魅力と可能性を体系的にまとめること。これなしでは進めない。

 

⑩ BMC研究会に以前提案したことであるが、首都圏の観光地でも必ず1泊以上滞在することが、観光事業発展のためには必要である。日帰りや素通りでは観光事業として発展が限られてくる。東京近郊の観光地はどこでも同じ状況である。1泊以上したくなる魅力を創造すること。自分たちで自助努力で先ず考えること。私は、温泉、地元の美味しい料理、それに訪問して楽しい観光資源の、3つの要素が必要と考える。鴻巣市にはそのような宿泊施設がない。もし上記提案が基本的に合意され、詳細計画に入る段階になれば、温泉付きの宿泊施設建設を考えても良い、協力しても良いと言う経営者が存在している。自分達だけでなく、そのような多くの企業や関係者を巻き込んだ、より高次元の観光事業構想に発展できればと、期待している。

 

4. 最後に、 デービッド・アトキンソン「新・観光立国論」より。

これはイギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」でもある。

① 観光立国になるには、「気候」、「自然」、「文化」、「食事」の4条件が必要である。日本はその全てを満たしている稀有な国である。実は大変に恵まれている。

② しかし2013年の日本の外国人観光客は1036万人で世界第26位である。世界の国際観光客合計が10億8700万人と幾何級数的に増加している中で、大変少ない。

③ 観光客数の人口に対する割合は、26位までの国々平均で26.3%。それに対し日本は8.2%である。世界の観光産業は全世界GDPの9%を占める中で、日本は0.4%である。もったいない。日本全体の視点になっても、問題を洗い出し改善する必要がある。

④ なぜ日本が観光業に力を入れてこなかったか。ポテンシャルがあるのに、実はその能力に気づいていなっかった。観光産業強化の考え方が乏しかった。戦略が殆んどなかった。スローガンはあるが、今現在も意識が乏しいままである。観光客は一律ではなく、多様な人々が訪問してくる。色々な人々が色々な目的で訪れるのである。マーケットインの考え方にこれから徹する必要がある。

⑤ 現在の観光客はアジア人が多い。しかし世界の富裕層は欧米やオセアニアである。欧米人は文化や歴史に大変興味がある。それに焦点を当て、多様なニーズに応えること。観光立国になることは、GDP回復に直接的に結びつきやすい。国民の幸福度アップにもつながる。

以上